法定相続人の放棄が相続に与える影響詳細解説
2026/04/14
法定相続人の「一人が」相続放棄をする場合、他の相続人らにどのような影響を及ぼすのでしょうか?相続放棄の影響は、単純にその相続人の相続人としての地位(遺産を承継し、負債から免れる)を失うだけにとどまりません。相続放棄は、他の相続人にも影響が生じますので、少し整理します。
目次
相続放棄の基礎知識
法定相続人が相続放棄を行う場合、その行為がどのような意味を持ち、どのような法的効果を及ぼすのかを正確に理解することが重要です。
相続放棄は、相続人が相続人の地位を放棄する意思表示といえます。口頭で、親族や債権者に宣言するだけでは足りず、家庭裁判所への申述の手続きが必要です。家庭裁判所の申述の手続きですので手続き要件がありますし、相続放棄できない(例 単純承認になってしまっている)場合もあるのですが、相続人による意思表示ですので、この場面では相手方債権者らの異議があるわけでもなく、家庭裁判所が本来相続放棄できないにもかかわらず誤って申述を受理してしまうケースもあります。そのため、実務では、相続放棄が有効か?無効か?は、債権者が後日起こす次の紛争で判断されることになります。具体的には、債権者が、相続放棄した者に対し、「相続放棄は無効」だから被相続人の借金を返せという訴訟内で、その訴訟の継続裁判所が相続放棄の有効、無効を判断します。
放棄が認められると、その相続人は初めから(遡及効)相続人ではなかったものとみなされます。そのため、相続放棄をした者は、遺産を承継する権利も義務もなくなり、借金などの負債責任も免れる結果となります。
相続放棄の効果は単にその人の相続権の喪失に限らず、他の者に影響します。それについて見ていきましょう。
先順位法定相続人の放棄→後順位法定相続人への影響
まず、法廷相続人には2系統あり、順位があります。また同順位相続人間では頭割りが原則です。
【2系統の法定相続人】
配偶者(夫・妻)は常に相続人となり、もう1系統の相続人と一緒に相続します。
なお、内縁の配偶者は、法定相続人にはなれません。離婚の場合の内縁の配偶者保護や、社会保険制度における内縁の配偶者保護とは異なります。
【配偶者以外の法定相続人】
1 第1順位の法定相続人:直系卑属です
簡単に言うと、子(実子・養子)や、子が先になくなっている場合は孫(代襲相続)になります。
第1順位の相続人がいる場合、下記の第2順位以下の者は相続人にはなりません。
配偶者と第1順位の相続人がいる場合、配偶者が1/2、子ら全員で1/2の相続割合となります。
2 第2順位の法定相続人:直系尊属です
簡単に言うと、父母、父母がいなければ祖父母になります。
第1順位の相続人(直系卑属)がいない場合、又は全員が相続放棄し第1順位の相続人が誰もいなくなった場合に、第2順位の者(直系尊属)が相続人となります。
配偶者と第2順位の相続人の場合、配偶者が2/3、直系尊属ら全員で1/3の相続割合となります。
3 第3順位の法定相続人:兄弟姉妹です。
亡くなっている場合は甥・姪(代襲相続)となります。
第1・第2順位がいない場合のみ相続人となります。
配偶者と第3順位の相続人の場合、配偶者が3/4、兄弟姉妹ら全員で1/4の相続割合となります。
4 配偶者がいない場合
配偶者の相続分はありませんので、
①第1順位の相続人らが全て相続
→②第1順位の相続人がいない又は全員が相続放棄した場合には、第2順位の相続人らが全て相続
→②第2順位の相続人もいない又は全員が相続放棄した場合には、第3順位の相続人らが全て相続
5 直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹ら第1順位から第3順位の相続人が誰もいない又は全員が相続放棄した場合
配偶者が全て相続します
【まとめ】
相続放棄の法的効果は、最初から相続人ではなかったことになります。
そのため、相続放棄により第1順位の相続人が誰もいなくなってしまうと、最初から第1順位の相続人はいなかったみなされますので、第2順位の者に相続権が移っていきます。第2順位の者は、第1順位の相続人が誰もいなくなったことを知ってから3か月以内に自身が相続放棄するのか相続するのか判断していくことになります。
後順位相続人は近親者ですので、相続放棄する場合にも、後者への影響を考慮して丁寧な説明、対応が好ましいと言えます。
同順位相続人間での影響(相続分の再配分)
法定相続人の一人が相続放棄をすると、その人物は初めから相続人でなかったものとみなされます。同順位相続人が複数いる場合、そのうち1人が相続放棄した場合について整理します。
最初に、同順位の相続人同士では、原則として(※父母が異なる兄弟の場合は例外)法定相続分は均等になります。
① 相続人が子だけ、子が複数いる場合
例 子が3人→ 各 1/3
例 子が3人いたがそのうち一人が先に亡くなっていた、その者に子が2人(被相続人からみると孫が2人)→子各1/3、孫は各1/6(2人で1/3)
② 配偶者+子の場合
配偶者は常に相続人で、子という「同順位グループ」内で均等配分します。
例 配偶者+子3人→配偶者:1/2、残り1/2を子3人で均等配分(1/2×1/3=各1/6)
では、同順位グループの相続人のうち1人だけが相続放棄した場合について見ていきます
相続放棄の結果、相続分は他の相続人の間で再配分されることになります。この際、再配分は同順位相続人間で影響するという点に注意が必要です。
①相続人が子だけ、子が複数いる場合
例 子が3人(本来 各 1/3)→子の1人が相続放棄すると、相続人が子2人だけになりますので、各1/2となります
例 子が3人いたがそのうち1人が先に亡くなっていた、その者に子が2人(本来子各1/3、孫は各1/6)→子の1人が相続放棄した場合、残る子1人と、代襲相続人2人が相続しますので、子は1/2、代襲相続人は各1/4(2人で1/2)
例 子が3人いたがそのうち1人が先に亡くなっていた、その者に子が2人(本来子各1/3、孫は各1/6)→代襲相続人の1人が相続放棄した場合、残る子2人と、代襲相続人1人が相続しますので、子と代襲相続人1人が各1/3(代襲相続人グループ内で再配分)
② 配偶者+子の場合
例 配偶者+子3人(本来配偶者:1/2、子1/6ずつ)→子の1人が相続放棄すると、相続人が子2人だけになりますので、配偶者1/2、子各1/2となります。
例 配偶者が相続放棄すると、相続人が子だけになりますので、子各1/3となります。
「相続放棄」と似て非なるものとして「相続分放棄」と「相続分譲渡」があります。
先ほど、子が3人長男、次男、三男(本来 各 1/3)がいる場合に、長男が相続放棄すると、他の相続人である次男・三男が各1/2と増えると説明しました。しかし、長男が、自分は「要らない」が自分の相続分は次男にだけ上げたいと思うときは、「相続放棄」をせず(次男に対する)「相続分譲渡」の手続きを行うべきです。
以上の通り、相続放棄(相続分放棄、相続分譲渡)は他の相続人に影響させる法律行為です。ご自身の為関係者の為にも専門家に相談して最も適した手続きを選択されるとよいと思います。