石川安藤総合法律事務所

相続とサブスクリプションサービス

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相続とサブスクリプションサービス

2026/03/24

 近年、音楽・動画配信、クラウドサービス、オンラインサロンなど、いわゆる「サブスクリプションサービス(定額制サービス)」を日常的に利用する人が増えています。こうしたサービスは便利である一方、利用者が亡くなった場合の取り扱いについては、十分に理解されていないことが多く、相続の現場でも新たな問題として顕在化しています。

 本コラムでは、相続とサブスクリプションサービスの関係について、法的な位置づけと実務上の注意点を解説します。

目次

    1.サブスクリプションサービスは相続の対象になるのか

     まず問題となるのは、「サブスクリプションサービスは相続財産に含まれるのか」という点です。

     結論から言えば、多くのサブスクリプション契約は「契約上の地位」に関する問題となり、単純な財産(預金や不動産など)とは異なります。利用規約において、契約者本人のみが利用できるとされているケースが多く、契約上の地位の承継(相続)が制限されていることが一般的です。

     例えば、動画配信サービスや音楽配信サービスのアカウントは、原則として第三者への譲渡が禁止されており、相続人がそのまま引き継いで利用することは想定されていません。

     したがって、サブスクリプションサービスは「そのまま相続するもの」というよりは、「解約や整理の対象」として捉える必要があります。

    2.放置するとどうなる?実務上のリスク

     サブスクリプションサービスの問題は、見落とされやすい点にあります。被相続人がどのようなサービスに登録していたかを把握できないまま、契約が継続してしまうケースが少なくありません。

     主なリスクとしては、以下のようなものがあります。

    (1)料金が引き落とされ続ける

     クレジットカードや銀行口座から自動的に料金が引き落とされるため、解約しない限り課金が続きます。特に、少額のサービスが複数ある場合、気づかないうちに長期間支払いが続いてしまうことがあります。

     死亡後にクレジットカードが停止されると決済エラーとなり、そこで初めてサービスの存在に気づくケースもあります。しかし、それまでの期間については課金が継続している可能性があります。

    (2)不要な契約トラブルの発生

     解約手続きが遅れたことにより、未払い料金や遅延損害金が発生するなど、思わぬトラブルに発展する可能性もあります。

    3.相続人はどこまで対応すべきか

     では、相続人はサブスクリプションサービスについて、どこまで対応する必要があるのでしょうか。

     基本的に、不要な契約は速やかに解約することが望ましいです。

     もっとも、すべてのサービスを網羅的に把握することは容易ではありません。実務上は、以下のような方法で調査を行います。

    ・クレジットカードの明細を確認する

    ・銀行口座の引き落とし履歴を確認する

    ・メールアカウントを確認する(登録通知や請求メール)

    ・スマートフォン内のアプリを確認する

     特にメールは重要で、多くのサービスが登録時や更新時に通知を送っているため、有力な手がかりとなります。

    4.解約手続きのポイント

     サブスクリプションサービスの解約は、各事業者ごとに手続きが異なりますが、一般的には以下の点に注意が必要です。

    (1)本人確認資料の提出

     死亡の事実や相続人であることを証明するため、戸籍謄本や死亡診断書の提出が求められることがあります。

    (2)ログイン情報が不明な場合

     IDやパスワードがわからない場合、通常の解約手続きができず、別途問い合わせが必要になります。この場合、手続きに時間がかかることがあります。

    (3)海外サービスの対応

     海外事業者が提供するサービスでは、日本語での対応が難しい場合や、手続きが複雑になるケースもあります。

    5.生前にできる対策

     サブスクリプションサービスに関する問題を防ぐためには、生前の対策が非常に重要です。

     具体的には、以下のような準備が有効です。

    (1)利用サービスの一覧化

     自分が利用しているサブスクリプションサービスをリスト化しておくことで、相続人が把握しやすくなります。契約サービスや解約方法を記載しておくことで、相続人の負担を大幅に軽減できます。

    (2)ID・パスワードの管理

     専用のノートやパスワード管理ツールを活用し、必要な情報を整理しておくことが重要です。

    (3)不要なサービスの整理

     利用していないサブスクリプションは、生前のうちに解約しておくことが望ましいです。

    6.専門家に相談すべきケース

    以下のような場合には、弁護士などの専門家への相談を検討すべきです。

    ・契約内容が不明で解約できない場合

    ・多額の未払い料金が発生している場合

    ・海外サービスとのトラブルがある場合

    ・相続人間で対応方針が対立している場合

     デジタル関連の問題は今後ますます増加すると考えられ、専門的な知識が求められる場面も多くなっています。

    7.まとめ

     サブスクリプションサービスは、現代の生活に欠かせない存在となる一方で、相続においては見落とされがちな問題です。放置すれば金銭的な損失やトラブルにつながる可能性があるため、適切な把握と対応が不可欠です。

     相続手続きでは、預金や不動産といった従来の財産だけでなく、「デジタル上の契約関係」にも目を向ける必要があります。

     生前の準備と、相続発生後の適切な対応を通じて、不要なトラブルを未然に防ぐことが重要といえるでしょう。

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