石川安藤総合法律事務所

相続不動産における取得時効の法的解説

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相続不動産における取得時効の法的解説

相続不動産における取得時効の法的解説

2026/03/05

父・母・長男が父名義の実家不動産同居し、他の兄弟姉妹が家を出ていたような場合、父→母が亡くなり、長男が一人で実家不動産に居住しているような事案がよく存在します。このような場合で、遺産分割の手続きを行わず、亡父名義のままの不動産が二十年、三十年と残っているケースがあります。兄弟姉妹間が仲が良かったため両親と同居していた長男が家を継ぐのを当然のように考え長年経過してしまったケースもありますし、兄弟姉妹間で争いがあり遺産分割ができないまま長期間経過してし待ったような場合もあります。問題は、二十年、三十年と長期間経過した場合に非常に面倒な問題が生じることです。

目次

    相続不動産取得時効の基礎知識:なぜ問題が起こるのか?

    前で述べましたように、遺産分割を行わない、行えない何か理由があったはずです。これは遺産分割一般にあることです。

    長期間経過することで、それに法的、事実上の問題がいくつも加わります。

    1 遺産分割は、相続人全員の合意が必要です。先の例で、亡父→母と亡くなった時、子供が、例えば、長男、長女、次男、次女の4人だけであれば、4人が合意するだけで済みます。しかし、長年放置したことで、長男も死亡してしまった場合どうでしょう?長男の相続人の配偶者と子供たちが相続人に加わります。更に、長男の子供が死亡した場合には、その配偶者と子供が相続人に加わります。また、長男に配偶者しかいなかった場合、長男が死亡した段階では配偶者だけが相続人に加わるだけですが、その配偶者が死亡してしまうと、配偶者の家系にに連なる人が相続人になります。長年放置すると、ネズミ算式に相続人の数が増えていき、関係も希薄になっていきます(全然知らない人が相続人に加わることもあります)。

    2 そもそも、戸籍を取得し全相続人を確定するのが非常に大変になるという事実上の問題があります。これまで経験したケースですと、相続がいくつも発生し、模造紙に書いた家系図を持ってこられた方がいます。

    3 相続人の一部が行方不明になってしまうなど連絡がつかない場合もあります。これまであった例でいうと、相続人の一人が外国に移住し連絡が全然つかないというケースがありました。日本と違って戸籍や住民票がそろっている訳ではなく、弁護士の職務上の手続きが及びませんので、弁護士でも追跡ができないケースが生じてきます。そうすると、遺産分割の手続きの前に、不在者財産管理人の選任申立てが必要になるなど、手間やコストの負担が格段に重くなるケースがあります。

     

    相続手続きは、とにかく問題を先延ばしにしないことが肝要です。

    近年、相続登記の義務化が法律上定められたこともあり、遺産に不動産がある場合に、相続登記の手続きをしないと

    ぺナルティがあるんですよね?と違った視点で相談に来られる方がかなり増えた印象がありますが、相続手続きを先延ばしにすべきではない本当の理由は、長期間放置した場合の上記のようなデメリットがあるからです。

     

    基本的な対応

    遺産分割がまとまっていないのですから、原則、遺産分割をまとめる交渉を行い、交渉が奏功しない場合には家庭裁判所の遺産分割調停・審判といった手続きを進めていくことになります。

    しかし、前記の通り、長期間放置した場合、相続人が20人、30人いることもあります。遺産分割は、裁判所外の協議でも、裁判所の調停・審判でも全員の合意がないと成立しません。たった一人が反対するとか、反対はしないまでも協力しない人がいると(遺産分割協議書には実印で押印し、印鑑登録証明書を添付する必要があるのですが、実印で押印するとか印鑑登録証明書を提出することを非常に嫌がる人はかなり多いです。特に全然知らない相続人から言われた場合、慎重になるのもやむを得ないでしょう)、遺産分割協議は成立しないのです。今まで9割の相続人が遺産分割協議書に署名押印したことが無意味になります。

    そこで、相続人が多い場合には、できるだけ頭数を少なくすることがセオリーです。そこで、遺産に関心が低い人を味方につけ、相続分を無償・有償で譲り受け、相続人の頭数を少なくして手続きを進めます。

    一挙解決の手段として取得時効が使えないか

    前項で説明した方法で解決していけばゴールは来るのですが、それでも何十年も放置した場合、解決すべき問題は多く、手間・負担は相当大きいです。そのため、相談者の方から、長年、自分が占有しているのだから取得時効が成立しているのではないか?と質問されることがしばしばあります。そこで、今回は、相続財産の取得時効について説明します。

    原則と例外

    結論から言うと、遺産分割が未了の不動産を相続人の一人が長年単独で「占有」していても、原則として、「取得時効」は成立しません。

     

    相続が起こると、遺産分割が成立するまで、各遺産は(遺産)共有になります。先の例でいうと、実家不動産は長男、長治、次男、次女の4人が法定相続割合で共有しているのです。長男は、4人が共有する不動産を単独で使っているにすぎません。

     

    「取得時効」が成立するための基本的要件は、

    ①所有の意思をもって占有(自主占有)

    ②一定期間の継続

    です。長男が長年単独で占有している場合、②の要件は満たすのですが、①の要件を満たさないと言われています。

     

    相続が起こると、遺産分割が成立するまで、各遺産は(遺産)共有になります。先の例では、長男は、4人が共有する不動産を単独で使っているにすぎません。

    長男は、所有の意思をもって、自分のものと思って占有しているのではなく、相続人みんなで共有する不動産を使わせてもらっていると評価されるため、①自主占有ではない(他主占有)とされるため、取得時効が成立しないのです。

     

     

    例外的に取得時効が成立する場合

    逆に言えば、①「自主占有」と評価されれば、「取得時効」が成立する道が残されています。

    例えば、他の相続人に対し、「これは自分のものである」と明確に宣言し、所有者として固定資産税を長年単独で支払い、他の相続人の利用を拒絶、共有関係を否認する意思表示をしているような場合に、「自主占有」が認められる可能性があると言われています。

    気を付けていただきたいのが、占有する相続人が、内心でこれは自分だけのものだ、単独所有なんだと思っているだけでは足りないということです。

     

    最高裁(昭和47年9月8日)は、共有者の一人が占有していても、他の共有者の持分を排斥する意思が外形上明確に示されない限り取得時効は成立しないと、原則・例外を説明しています。

    別な視点の訴訟

    問題の出発点で、兄弟姉妹間が仲が良かったため両親と同居していた長男が家を継ぐのを当然のように考え長年経過してしまったケースもありますし、兄弟姉妹間で争いがあり遺産分割ができないまま長期間経過してし待ったような場合もあると説明しました。前者の場合で、兄弟間で遺産分割協「書」は作成していないが、兄弟皆(相続人全員)が長男が単独承継することを認めていたという「口頭の合意」がある場合、遺産分割協議「書」は作成したが印鑑が認印だったとか、実印で押したが印鑑証明がもらえなかったような場合、法務局で使えるような「遺産分割協議書」がない場合、訴訟を利用して、判決に基づいて長男単独名義にする訴訟を観念することができます。

     

    相続開始後複雑化した事案は、一般の方だけでの処理は非常に難しいです。また状況により、「取得時効」が使えないか?「口頭の遺産分割」が成立していないか?異なったアプローチも考えられます。専門家に相談されることをお勧めします(しかもなるべく早く)。

     

     

     

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