石川安藤総合法律事務所

遺言の無効事由について ― 遺言が無効となるケースとは

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遺言の無効事由について ― 遺言が無効となるケースとは

遺言の無効事由について ― 遺言が無効となるケースとは

2025/10/03

 人生の終末を迎えるにあたり、自分の財産をどのように分配するかを決める「遺言」は、法的にも極めて重要な意思表示です。しかし、せっかく作成した遺言が、法律上無効とされてしまうことがあります。そうなると、遺言者の意思が実現されず、相続人間で紛争が生じる可能性もあります。

 本コラムでは、「どのような場合に遺言が無効になるのか」、そして「無効とされないためにはどのような点に注意すべきか」について、弁護士の視点から詳しく解説します。

1. 遺言とは

 遺言とは、被相続人が自己の死後の法律関係を定めるために行う最終的な意思表示のことです。遺言によって、財産の分配(相続分の指定、遺贈など)や、認知・後見人の指定といった重要な法律効果を生じさせることができます。

 民法では、遺言の方式や要件について厳格な規定があります。これは、遺言者の真意を確保し、後日の紛争を防ぐためです。したがって、これらの要件を満たさない遺言は、たとえ遺言者の意思に基づいていたとしても、無効となってしまうことがあります。

2. 遺言が無効となる主な事由

遺言が無効とされる理由には、大きく分けて以下の3つのカテゴリーがあります。
 

⑴ 方式違反による無効

 民法は、遺言の方式について厳格な規定を設けています(民法第960条以下)。この方式に違反している場合、遺言は無効となります。代表的な遺言の方式には以下のようなものがあります。

 ①自筆証書遺言

 最も一般的な遺言方式ですが、以下のような要件があります(民法第968条1項):

 ・遺言者が全文、日付、氏名を自書すること

 ・押印があること

 ここでは、「全文自書」が極めて重要です。たとえば、パソコンで作成した文書に署名だけ手書きで行った場合や他人に口述筆記させた場合は、自筆証書遺言として認められません。また、作成日については明確に記載をする必要があります(たとえば、●月吉日という記載は、作成日が明確となっていないため、無効とされる可能性が大きいです。)。

 財産目録を添付する場合には、財産目録自体は自書によることを要しません。もっとも、この場合には各ページに遺言者が署名・押印をしなければなりません(民法968条2項)。

 ②公正証書遺言

 公証人の関与のもとに作成されるため、安全性が高い方式ですが、以下の要件があります(民法第969条):

 ・証人2人以上の立会いの下で、遺言者が口頭で内容を述べること

 ・公証人が筆記し、遺言者と証人に読み聞かせること

 ・遺言者と証人が内容を承認し署名・押印すること

 この一連の手続が適正に行われていなかった場合、公正証書遺言であっても無効とされることがあります。

 

⑵ 能力の欠如による無効

 遺言は法律行為であるため、意思能力が必要です。遺言時に意思能力を欠いていた場合、その遺言は無効になります。

 ①遺言ができる年齢

 民法第961条では、「満15歳に達した者は、遺言をすることができる」と規定されています。つまり、15歳未満の者が作成した遺言は無効です。

 ②意思能力の欠如

 意思能力とは、自分の行為の意味や結果を理解し、判断できる能力を指します。遺言時に認知症が進行していたり、精神疾患により判断能力が著しく低下していた場合、その遺言は無効とされる可能性があります。

 認知症などにより、財産の内容や相続の効果を理解できない状態である場合がこれに当たります。医学的所見(診断書、カルテ)や、日常の言動、遺言作成の経緯などから総合的に判断されます。

 

 意思能力の欠如による無効を避けるためには、遺言作成時に判断能力があったことを証明するため、医師の診断書を取得しておく、作成時の状況を記録(録音・録画)しておくといった対応が有効です。

 

⑶ 詐欺・強迫による取消し

 他人による詐欺や強迫によって遺言が作成された場合、遺言者(遺言者の死亡後はその相続人)は、その遺言は取り消すことができます。たとえば、以下のようなケースが該当します。

 ・「遺言を書かないと家族に危害を加える」と脅されて作成した

 ・偽の情報(「他の相続人が全ての財産を奪おうとしている」など)を信じ込まされて、意図しない内容の遺言を書いた

 

⑷ 遺言の内容の問題による無効

 遺言も、公序良俗や強行法規に反する内容(たとえば、相続の条件として違法行為を強要する、再婚を禁止するといった不当な条件を付すようなもの)は無効となります。また、遺言内容が遺言の解釈によって確定できない場合にも無効となります。

3. まとめ

 遺言を作成する際は、以下の点に注意しましょう。

 ・民法に定められた方式に厳格に従う

 ・疑義を生まないよう、簡潔かつ明確な表現を用いる

 ・可能な限り、公正証書遺言を作成する

 ・専門家である弁護士等に相談する

 せっかくの遺言も、無効になってしまっては意味がありません。遺言は「自分の人生の最後のメッセージ」です。だからこそ、法的にも確実なものを残すことが大切です。

 当事務所では、公正証書遺言作成のサポートも対応しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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