石川安藤総合法律事務所

遺産分割と一部分割の方法

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遺産分割と一部分割の方法

遺産分割と一部分割の方法

2025/03/21

被相続人が、遺言を残していない場合、遺産分割協議等をして、遺産の帰属を決める必要があります。遺産分割が成立していないと、法務局で不動産の名義を変えることができません(売却や賃貸をしたくても進められません)。また金融機関で預貯金の払い戻しができません。

一方で、遺産分割については、争点が多岐にわたり交渉がスムーズに進まず、時間を要する場合もあります(相続人らの話合いで解決できず、弁護士に相談に来るケースを考えていただければご理解いただけると思います)。そこで、例えば、相続税の申告・納税が必要な場合(相続開始後10カ月)に、預金だけでも協力して払い戻せないか?との場合が生じます。

また、不動産を共同して売却して(実は、売り方だけでもなかなか合意できない相続事件は意外に多いです)全て現預金にして平等に分けようというように不動産売却だけを先行する場合があります。

また、紛争が先鋭化する類型として、同居する相続人の使い込みや所謂使途不明金問題が絡む事件があり、遺産分割がなかなかまとまらない場合があります。そこで、目の前の争いのない遺産についてだけ遺産分割協議を行い、使途不明金や使い込みについては別途手続きをとることとして遺産分割を進める方がよい場合があります。

 

目次

    一部の分割協議

    全ての遺産について一括で話合いがまとまり相続問題が解決できるのが理想ではありますが、上記の通り、遺産の一部についてだけ遺産分割成立を先行して成立させる必要がある場合があります。現行法は、一部の遺産だけについて遺産分割をまとめることも規定していますので(相続法改正前は、一部分割について明文規定はありませんでしたが一般的に有効と考えられてきました)、一部分割協議をすることはママ存在します。

    そのような場合、遺産分割協議書にはどのように記載するのでしょうか?

    そもそも遺産分割協議書の体裁、記載内容について決まったものはありません(法務局や金融機関が受け付けてくれる内容であれば全く問題ありません)。また別のコラムで記載しましたが、必ずしも実印・印鑑証明付きの遺産分割協議書ではなくとも有効に成立している場合があります(法務局での登記手続きを進めたり、金融機関での預貯金払い戻しを進めるために裁判手続きを要しますが、相手方相続人に遺産分割の結果をちゃぶ台返しされることはありません)。

    一部分割の遺産分割協議書の記載も定型的なものはありません。極論するに、何を、誰が取得するのかを記載すれば、記載した内容で遺産分割協議が成立します。ただ、記載の仕方によって、その後の残余の遺産についての遺産分割でトラブルが生じることもありますので、作成の際にはその点に留意する必要があります。

     

    その後の残余財産の遺産分割との関係

    一部の遺産についてだけ遺産分割を成立させることとし、それに応じた遺産分割協議書に調印することがあります。

    しかし、先行させた一部分割が、残余の遺産の遺産分割にどのような影響を与えるか?という問題があるのです。具体的には、先行した遺産分割の内容・結果を、残余の遺産分割で考慮しなければいけないか?という問題です。一部分割で、法定相続割合で分けず、遺産を法定相続割合より多く取得した相続人と、少なくした相続人がいる場合に、後行の残余の遺産分割で、平等になるように分割しなければいけないか?という問題です。

    ※仲の良い相続人では問題ありません。また、遺産全体について法定相続割合でなくともよい(自分は少なくていい)といった事案でも問題ありません。そうではなく、平等に分けたいと考えている場合に、先行の一部分割と後行の残余の遺産分割で、平等になるように「分割しなければいけない」かとの問題です。

    先行の一部遺産分割協議書で、先行の一部分割の内容・結果を、後行の残余の遺産分割時に考慮する、影響させる趣旨の記載を明確にしておけば、残余の遺産分割において、全体で平等になるように考慮することになります(考慮させない場合には、その記載をしておくべきです)。逆に、このような記載をしていない場合に、2つの考え方があります。

    先行の一部分割の内容・結果を、と後行の残余の遺産分割で、「考慮・影響させて」全体で平等になるようにすべきと立場と、「考慮・影響させず」後行の残余財産の遺産分割内で公平が実現できれば良い(全体では不公平になってもよい)という立場です。

    裁判例は、抽象的には、先行の遺産分割の合意の意思解釈によって定まると考えていると思われます。先行の遺産分割協議の内容や、一部分割をした経緯から判断することになると思われます。一応裁判所が有する基準ですが「意思解釈」ですので、どのように認定されるかは分かりません。実際、先行の遺産分割の合意の意思解釈として、後行の残余の遺産分割に先行の一部分割を「考慮させる」意思と認定した結果のものと、「考慮させない」意思と認定した結果のものが存在します。

    そのため、一部分割を行う際には、先行の一部遺産分割協議書で、先行の一部分割の内容・結果を、後行の残余の遺産分割時に考慮する、影響させるか、させないか明確にしておくべきです。

     

     

     

    先行の一部遺産分割が法定相続割合であったとしても

    一部遺産分割が行われるケースとして、預貯金を先行して法定相続割で取得(換金)する遺産分割があります。法定相続割合での取得ですから、後行の残余の遺産分割に影響・考慮させるか、影響・考慮させないかは重要ではない、と考えられる方がいると思います。残余の遺産を含め、遺産全体を法定相続割合で分割すれば足りる事案では、後行の残余の遺産分割に影響・考慮させるか、影響・考慮させないかは重要ではありません。ただ、特別受益や寄与分が問題となる事案では、重要となるケースがあります。例えば、遺産が5000万円、3500万円について一部分割した事案を考えてみます。仮に、特別受益として2000万円が認められる場合、残余財産1500万円の中でしか特別受益が考慮できないとすると、1500万円+2000万円÷2=1750万円が具体的相続分になります。特別受益を得ていた相続人が、後行の遺産分割で遺産を取得できないのは当然として、もらいすぎの250万円を戻す必要があるか?の問題が生じます。遺産分割における特別受益は、既に取得した遺産を吐き出させることはではできないと言われていますので、仮に、後行の残余の遺産分割に影響・考慮させないという立場の場合(後行の残余財産だけを取り出して遺産分割することになります)、この250万円の精算はありえません。寄与分についても似たような問題が生じます。そこで、特別受益や寄与分が問題となる事案では、一部分割の内容・結果を、後行の残余の遺産分割に影響・考慮させるか、影響・考慮させないかが重要性を持ってくるのです(請求する側か請求される側かでアドバイスが変わってきます)。

    やはり、特別受益や寄与分が争点になる事案では、早期に(できれば最初から)ご相談ご依頼いただければと考えます。

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