任意後見契約の魅力と利点
2025/03/17
任意後見契約は、判断能力があるうちに、「予め」将来の判断能力が低下した時に備え、信頼できる人に自分の財産や生活に関する判断を「委任」しておくことができる重要な制度です。この制度を利用することで、将来の不安を軽減し、安心して生活を送ることができます。特に、弁護士が関与することにより、法的な知識や経験を活かした適切で安心な契約内容が整えられるため、利用者はより心強く感じることでしょう。本コラムでは、任意後見契約の具体的な利点を説明します。
目次
後見とは
判断能力がない人は、法律行為ができません。例えば、不動産賃貸業をしている方が判断能力が無くなってしまうと、➀工務店に修繕をお願いすること(請負契約)、②原資を確保するために預金を解約すること(寄託契約)、金融機関で借入れをすること(金銭消費貸借契約)、③新たな賃借人に貸出しをすること(賃貸借契約)ができなくなってしまい、事業に支障が出ます。そのような場合に、判断能力がない人に代わって法律行為を行うのが後見人です。後見人には、「法定後見」と「任意後見」があります。任意後見の特徴・メリットは、法定後見のそれと比較するとわかりやすいと思います。
先の例では、分かりやすいように、事業を行っている人を例にしました。しかし、事業を行っていない一般の方でも、後見が必要になることはママあります。例えば、施設に入るための費用を作るために自宅を売却したい(売買契約)とか、賃料収入を得るために自宅を賃貸に出したい(賃貸借契約)等の場合が考えられます。そこで、皆様にとって、有益・必要になる可能性がある制度ですので、以下ご説明します。
法定後見と任意後見
法定後見:「判断能力が亡くなった後」に、家庭裁判所に、①後見開始と②後見人選任を求める法的手続きです。②後見人として誰を選任するかは裁判所の裁量・専権であり、誰が選任されたかに対し不服申し立てできません。法定後見の申立て時には、推定相続人が同意しているか?などの確認がとられますので、険悪な関係にある相手方推定相続人が後見人になってしまうようなケースは少ないと思われます。しかし、逆に、自分が後見人に選任されると思っていたのに、相手方推定相続人の同意がないとか、資産規模が大きいとか、予想される法律行為の内容から、親族ではなく、全く知らない第三者の弁護士や士業が後見人に選任されることも少なくありません。また、後見制度が、本人の財産維持を目的としますので、どの程度の支出を許すか、人によりマチマチであるということは否定できません。他人が、家に入り込むことになりますので、後見人となった者と緊張関係が生じる場合があります(少なくとも不便、面倒であることは明らかでしょう)。一度選任された後見人を交代するのは非常に難しいと言われています。
任意後見:「判断能力がある」うちに、将来の判断能力が無くなった時に備え、予め②後見人となる人を決め、依頼しておく制度です。任意後見契約段階までは家庭裁判所の関与はなく公証役場にお願いします(契約書案は我々弁護士が作成し、それを公証人に公正証書化してもらいます)。判断能力がある人による「契約」により、誰に任せるかを決めておくことができます。そして、任意後見は法定後見に優先すると法律上定められていますので、よっぽどのことが無ければ法定後見人が選任されてしまうケースはないといえます。実際に判断能力が無くなった場合には、家庭裁判所に対し、後見監督人選任の申し立てを行います。
大きな違いは、①いつ?=判断能力があるうちに手を打っておくか、判断能力が無くなってから行うか?、②後見人選択の確実性です。
任意後見契約のメリット
任意後見のメリットは、誰を後見人にするかは事前に決めておくことができ、これが家庭裁判所により覆されることがほとんどないという点です。
あえて、デメリットを挙げるのであれば、契約のために諸費用が掛かることです。仮に、判断能力がなくなることなく亡くなられた場合、すなわち任意後見監督人選任申立てをする必要がなかった場合(任意後見契約を実際には使わなかった場合)、当初費用が結果的に無駄になったことになります。そのため、判断能力が無くなってから法定後見を申し立てればよいといわれる方もいますが、法定後見のデメリット(トラブル、不満)を考えれば、費用をかけてでも任意後見契約を締結しておくことは有益だと考えています。任意後見契約は、いわば「保険」です。それをどう考えられるかだと思われます。当事務所も、状況や、コストパフォーマンスを考え全てのご相談で任意後見契約をご案内しているわけではありませんが、必要に応じて積極的にご案内しています。
契約を進めるためのポイント:実際の運用における注意点
任意後見契約を締結する場合、契約書に代理権目録を付し任意後見人が行うことができる法律行為を列挙しておきます。定型的な法律行為を書き込むのは当然ですが、ご本人に想定される独自の法律行為がある場合にはそれを記載しておく必要があります。例えば、投資用不動産をローンで購入している場合、一定期間の優遇金利が特約として定められている場合があります。当該期間終了時に改めて特約を締結する必要がありますが、それを見越した文言を入れておかないと、いざ特約を再締結しようとしても、銀行が受け入れない場合があります。せっかく作った任意後見契約に穴ができないように、弁護士とよく相談して契約書案を作成するべきです。
任意後見契約を締結する場合
別件のご相談・ご依頼時に、念のため「任意後見契約」をご提案する場合があります。
例えば、遺言を作りたいという場合に、任意後見契約をご提案する場合があります。例えば、遺言で、信頼する子に対し財産を残すという場合、当該子との任意後見契約をご提案することがあります。信頼できる子に、判断能力が無くなった時のことを託すことは有益と考えるからです。また、「判断能力があるうちに」、「判断の能力が無くなった後の」法律行為を任せるのが「任意後見契約」ですが、「判断能力があるうちに」、「今の(まだ判断能力がある)」法律行為を任せるという財産管理契約も同時に締結するケースもあります。
また、例えば、配偶者が亡くなったときの遺産分割事件をご依頼を受けるときにご提案することもあります。例えば夫が亡くなり、その配偶者の方から、遺産分割事件のご依頼を受ける場合が考えられます。ご夫婦ですので、同じような年齢のケースが多く、相続人の認知症が心配になるケースがあります。ご依頼時に、認知症が進み始めている場合、事件の複雑さから解決まで少し時間を要しそうと考えるときは、念のため、任意後見契約をご提案しておくことがあります。
安心して生活を送るために:任意後見契約の活用
交通事故で寝たきりになったなど突発的な場合は法定後見とせざるを得ない場合もあります。しかし、老いは皆に訪れる現象です。予め任意後見契約を締結しておくことは、有益なことと考えます。遺言と同じで、いつか作ろうと思っていると、作る機会を失います。気になった方は、気になったときに、ぜひご相談ください。