石川安藤総合法律事務所

遺産分割の基本知識と前提問題

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遺産分割の基本知識と前提問題

遺産分割の基本知識と前提問題

2025/03/15

「遺産分割」は、被相続人の「遺産」を相続人の間でどのように分けるかを決める法的手続きです。「遺産分割」は遺産の内容・経済的観点から相続人間で深刻な紛争となるだけでなく、相続人間の感情面等も絡んで深刻な紛争となるケースが多いです。「遺産分割」の基本的な流れ、思考方法については、別のコラムで記載しました。本コラムでは、「遺産分割の前提問題」と呼ばれる問題について解説します。

目次

    遺産分割の基本

    遺産分割の思考方法は、➀遺産の範囲の確定、➁不動産等の評価、➂特別受益と寄与分による法定相続割合の修正、④具体的分配という流れになります。「家庭裁判所」の遺産分割調停・審判は、この流れに従って検討していきます。②③④に関する紛争は、「家庭裁判所の遺産分割」の手続きの中で、裁判所が判断してくれます。しかし、➀の問題の一部、またその前提問題については、「家庭裁判所の遺産分割」では解決できません。家庭裁判所から、前提問題を処理してから遺産分割をするよう求められてしまいます。「前提問題」の類型別にご説明していきたいと思います。

     

    遺言の存在

    被相続人が、遺言を残しているケースがあります。遺言は、被相続人(遺言者)が、最後の遺志を残すものですので、法律上は、被相続人が自分の意思と判断で、作成するか?作成する場合にどのような内容とするのか?決める法律行為です。そのため、相続人らに説明したり、その了解を得る必要はありません。相続人らは、そもそも遺言があるのか?遺言があるとしてどのような内容なのかを知らないはずです。しかし、実際には、特定の相続人が、遺言者に遺言作成を勧めることが多いのは皆さんも感じているのではないでしょうか。特定の相続人が、遺言作成を勧めたり、その内容に関与すること自体は違法ではありません(遺言は有効)。

    中には、同居している相続人が、その優越的地位を奇貨として、被相続人の本意ではない遺言を作らせるケースがあります。例えば、被相続人は、内心は子らに平等に遺産を残したいのに、同居している相続人に多く相続させる内容の遺言が作られているケースとか、同居している相続人の関係者(例 配偶者とか子⦅被相続人の孫⦆)にも遺産を取得させる内容の遺言が作成されているケースが考えられます。残念ながら、これだけでは遺言は無効にはなりません。被相続人が、そのような状況を理解、消極的にでも受入れ、自分の意思で作った遺言だからです。

    しかし、問題となるのは、被相続人の判断能力が相当低下したような場合に、被相続人の意思によらない遺言書が作成させられたようなケースです。

    身体的能力と判断能力が連動するケースが多い一方で、身体的能力には何ら問題がないのに認知症が進み判断能力がない場合(またその逆)もまま存在するのです。後者のケースは、判断能力(遺言能力)があるのか?一見して判断ができません。自筆証書遺言に限らず、公証人が関与する公正証書遺言が無効と判断されるケースもあります。

    遺言があり、その遺言で帰属が定められた財産は、法律上、遺産分割の対象となる遺産から離脱し、遺産分割の対象とはなりません。そのため、遺言が無効を主張する場合、その手続きを了してからでないと、家庭裁判所の遺産分割の手続きに進められないのです。地方裁判所で「遺言無効確認」の訴訟で勝訴し、確定させる必要があります。「遺産分割の前提問題」です。

     

     

    養子縁組

    養親となる被相続人と、養子との間の合意で成立させます。両者だけの意思の合致が求められますので、相続人に説明したり、その了解を得る必要はありません。しかし、実際には、特定の相続人が被相続人に働きかけ、自分の関係者を養子とするよう求めることが多いのです。

    やはり、同居する相続人とか介護をする相続人が、自身に関係がある者との養子縁組を求めるのです。例えば、法定相続人が実の兄弟2人だけだった場合に、同居する長男が、その配偶者、子を養子縁組させてしまうような場合です。法定相続人が実の兄弟2人だけの場合、各人の法定相続割合は1/2だったのですが、長男の配偶者と子が養子になってしまうと、各人の法定相続割合は1/4になってしまいます。弟が憤慨するのは容易に推測できます。

    この場合も、それだけでは養子縁組は無効になりません。理由は遺言と同様です。

    しかし、問題となるのは、被相続人の判断能力が相当低下したような場合に、被相続人の意思によらない養子縁組をさせるような場合です。養子縁組は、役所に養子縁組届を提出して、窓口で審査を受けたうえで受理されると戸籍に反映されます。ただ➀届は、代書が認められています。②届の提出も本人である必要がありません(使者)。そのため、被相続人が判断能力がない場合でも、養子縁組届が作成され、役所に提出することが可能なのです。役所の窓口の審査は形式審査ですので、必要な記載がされているか?誤記は無いか?程度であり、養親に判断能力があるのかとか?養親のが自署しているのか(代書でも無効になるわけではありませんが、自署すらできない場合には、判断能力を疑う材料にはなります)?そもそも判断しないのです。

    養子縁組がなされ法定相続人が増えると、法定相続割合が変わります。そのため、養子縁組の無効(正しい法定相続割合)を主張する場合、養子縁組無効確認訴訟(管轄は家庭裁判所ですが、遺産分割調停・審判とは違う類型・手続きであり、遺産分割内で判断するものではありません)で勝訴し、確定してからでないと、遺産分割の手続きが進められないのです。

    なお、ご説明で分かると思いますが、同居する相続人は、自分側の取得財産を増やすため、遺言と養子縁組を組合わせて相続対策をしますので、遺言無効と養子縁組無効の両方が問題となるケースも散見されます。

     

     

     

     

     

     

     

     

    ➀遺産の範囲の確定

    現金、特に生前、不自然に、多額に預金口座から出金された場合、手元現金がたくさんあるのではないか?と問題になります。使途不明金と呼んで相談に来られる方が多いです。そして、大体のケースが、特定の相続人(た同居の相続人)が、被相続人の金融機関の印鑑・通帳・キャッシュカードを保持し、出金しています。当該相続人に質問すると、想定される弁解は、❶自分は出金していない、出金して被相続人に渡した(被相続人の生活費のため費消した)、❷生前贈与された等です。

    ❶のケース

    遺産分割調停は何を分割対象とするか➀遺産の確定が必要です。現金については金額まで確定する必要があります。現金額について合意できない場合、地方裁判所で遺産の範囲の確認訴訟で勝訴し、確定させて遺産を確定させる必要があります。

    被相続人の判断能力がない場合には、出金した相続人が違法、法的根拠なく出金したとして、地方裁判所の損害賠償請求・不当利息返還請求訴訟として別途手続きをとることもあります。

    使途不明金問題は、「遺産分割の前提問題」です。但し、全ての遺産分割がストップされるかは別問題で、不動産等遺産として争いが無い遺産だけを対象に遺産分割を進め、別途、並行して遺産の範囲の訴訟を進める場合もあります。

    ❷のケース

    遺産分割手続き➂特別受益の問題ですので、家庭裁判所の遺産分割の手続きで判断してもらいます。

     

    なお、似て非なる問題として「相続開始後の出金」です。被相続人が死亡した後、クレジットカードを使用してATMから相続開始後に特定の出金が繰り返されているケースがあります。銀行で手続きをとらない限り、当然に口座が凍結されるわけではないからです。これは遺産分割の確定の問題ではありません。遺産分割の対象となる遺産は、相続時に存在し、分割時に現存するプラスの財産ですので、相続後に預金が出金され費消されてしまうと、当然には遺産分割の対象となる遺産にはできませんでした。遺産分割の対象とするためには全相続人が遺産とすることに合意する必要がありました。しかし、出金した相続人が、遺産とすることに合意しないケースが非常に多かったため(別途、地方裁判所の不当利得返還請求訴訟を要しました)、民法が改正され、出金した相続人以外の相続人が遺産とすることに合意すれば足りるとされました。また、遺産の範囲の確定訴訟のよに、別途地方裁判所の訴訟を要するのではなく、家庭裁判所が遺産分割の手続きの中で判断できるとされています。

     

     

    手続の選択

    遺産分割の前提問題があると、別の訴訟手続きが必要となります。その分、遺産分割が進まず長期化するという問題が生じます。そこで、どのように進めるか手続きを検討する必要があります(現金のところでご説明しましたが、目に見える遺産だけ遺産分割を進めつつ、問題となっている使途不明金は別手続きを並行する等)。

    また、被相続人は死亡していますので、「証言」という証拠がありません。また、判断能力の低下と言ってもグラデーションがあります。そこで、被相続人にかかる診療録など客観的証拠に基づく、対応を助言させていただきます。

     

     

     

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