石川安藤総合法律事務所

遺産分割調停の進行と注意点

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遺産分割調停の進行と注意点

遺産分割調停の進行と注意点

2025/03/06

目次

    遺産分割「調停」:最初のステップを理解しよう

    法律問題は、大要、➀裁判所外の話合い(当事務所では「示談交渉事件」と呼んでいます)、➁裁判所を使った話合いである「調停」、➂裁判所の「裁判」を求める3つの手続きが観念されます。遺産分割事件でも➀裁判所外の話合いによる遺産分割示談交渉(遺産分割協議)、➁「家庭」裁判所を使った遺産分割「調停」、➂「家庭」裁判所による遺産分割「審判」という裁判手続きの3つが考えられます。前者2者は「話合い」という点で共通し、後者2者は「家庭」裁判所を利用するという点で共通します。遺産分割「調停」が不調(調停不成立)となると、自動的に遺産分割「審判」に移行します。遺産分割「調停」では、家庭裁判所のスタッフ(裁判官の補佐)である調停委員が関与します。調停の申立て後、裁判所が(申立人側と調整して)調停期日が指定されます。期日には、相続人が集まり、それぞれの主張(言い分)を提出します。調停の目的は、互いに合意を得ることなので、調停委員が積極的に話し合いを促進します。注意すべき点は、調停が必ずしも合意に至るわけではないということです。合意に至らない場合、次のステップとして「審判」に進む可能性があります。また、調停手続きは、感情的な衝突を避ける趣旨でも、申立人と相手方が交互に調停委員を介して話合いを進めています。本コラムでは、遺産分割事件の大きな流れを説明します。なお、調停手続きは、弁護士が代理人として裁判所に出頭しますので、依頼者様が出頭する時間的・精神的負担を軽減できます。深刻な対立では、相手方相続人と話をするだけでも苦痛だというケースが多いと思われます。お気軽にご相談ください。

    遺産分割の考え方

    ご相談者様には、❶手続きと、❷内容に分けて考えてくださいとご説明しています。

    ❶手続きは、上記で説明した➀裁判所外の示談交渉、➁「家庭」裁判所の遺産分割「調停」、➂遺産分割「審判」の3つです。

    ❷内容は、後記の通り、(遺産分割の前提問題)、➀遺産分割の対象、➁不動産等の「評価」、➂特別受益、寄与分の考慮、➃具体的な分配です。

    円満な遺産分割では、❷の流れを考慮せず、最終的に合意できればなんでもOKです。しかし、遺産分割「外」の問題や感情的トラブルもあり、当事者間で円満な話し合いができない場合、我々弁護士は❷➀~➃を念頭に事件を進めていきます。家庭裁判所が❷➀~➃で事件を解決を目指すからです。我々弁護士が法的紛争の解決のプロである所以は、法律・裁判所のルールを知っているからであるからといってもいいと思います。相手方が言っていることが不合理であれば、裁判所を使えばこうなりますよと説明し、実際、裁判所を使って相手方の不合理な主張と戦っていくことができるからです。

    ちなみに、遺産分割事件の裁判所は「家庭」裁判所で行います。家庭裁判所で代理人として出頭できるのは「弁護士」だけです。また、家族であっても代理人にはなれません。

     

     

     

    遺産分割の前提問題

    遺産分割の説明のコラムですが「遺産分割の前提問題」についてまず説明します。例えば、「遺言(書)」の問題です。遺言書がある場合、そもそも遺産分割が不要(むしろ遺産分割ができない)な場合があります。しかし、被相続人の認知症を奇貨(悪用)して、遺言書が作成されてしまう場合があります。そこで、遺言無効の手続きを踏む必要がある場合があります。遺言があると遺産分割は不要(できない)ですので、遺言が無い状態にするため、遺言無効確認(訴訟)を要する場合があります。また、相続人の特定の問題がります。やはり認知症を奇貨として、養子縁組が行われ、法定相続人が増えてしまっている場合があります。相続人が増える=一人当たりの法定相続割合・相続分が減るため、養子縁組無効の手続きを要することがあります。ほかにも紛争類型がありますが、これが前提問題です。

    遺産分割調停の流れ

    ➀遺産分割の対象:何を分けるかを最初に決めます。原則は、相続開始時に存在し且つ分割に存在するプラスの財産です。ただし、全相続人が、相続開始「後」の賃料収入とか、負債(マイナス)の負担を決めたり、葬儀費用についても解決することを望むのであれば、裁判所は協力します。しかし、全員の合意がなければ、裁判所は原則通り相続開始時に存在し且つ分割時に存在するプラスの財産だけを遺産分割の対象とします。そうしないと、いつまでも遺産分割がまとまらないからです。ただし、「家庭」裁判所は、問題を解決しなくていいというのではなく、他の手続きで問題を解決する旨説明しますので、問題の放置ではありません。

    ➁不動産の評価は「時価」です。最終的には家庭裁判所が選任する不動産鑑定士による鑑定額と言われますが、時間もコストもかかりますので、不動産業者の査定や、固定資産税評価額や相続税評価額などを基にした「みなし時価」を利用した評価の合意を目指します。合意できなければ鑑定をするか?という話になります。

    ➂特別受益(例 一定の生前贈与)や、寄与分(例 大きな負担を伴った介護)等、法定相続割合の修正要素です。この点についてはまた別のコラムでお話しします。

    ➃具体的分配方法:これは例でお話したほうが分かりやすいと思います。

     例 お母さんが亡くなり(お父さんは先に他界)、長男と次男の2人(法定相続割合は各2分の1)、遺産として時価3000万円の不動産と預金1000万円、株式1000万円の事例です。

     合計5000万円の遺産を2分の1宛取得するべきですので、各人の「枠」は2500万円です(5000万円÷2)。2500万円という「枠」で何を取得するかの問題です。不動産を取得したい長男は「2500万円の枠」しかないのに、3000万円の不動産が欲しいときにはどうしましょう?。「枠」の中でどう分け合うかの問題です。

     現物分割、代償分割(先の例では、不動産を取得する長男が「枠」を超過する500万円を次男に払います)、換価分割(不動産を売却・現金化して、現金で分けるという方法です)、共有分割やこれの組み合わせがあります。

    ➀~➃の順で一歩ずつ事件を進めていきますが、途中で話し合いができなくなると、原則「審判」に移行します。※申立人は取下げることも可能です(無論相手方が再度申し立てをすることが想定されますので、遺産分割を回避し続けることはできません)。また、家庭裁判所が、家庭裁判所で事件を進められないとして「なさず」とする場合があります。先に説明した前提問題がある場合などが典型例です。

     

    遺産分割協議書と遺産分割調停調書

    裁判所外の話合いで遺産分割がまとまったときには「遺産分割協議書」を作成し、皆が実印で署名押印し印鑑登録証明書を添付して完成します。遺産分割協議自体は口頭でも成立しますし、認印で遺産分割協議書を作成しても有効です。しかし、銀行や法務局が「実印」で作成した遺産分割協書と「印鑑(登録)証明書」を要求するため、通常、遺産分割協議書に「実印」で押印し、「印鑑(登録)証明書」を添付します。また、銀行や法務局に提出するときは戸籍なども必要になります。家庭裁判所で遺産分割調停を成立させたときは、裁判所が相続人を確定して調書に確認の記載を入れてくれます。そこで、銀行や法務局に提出するときは戸籍が不要ですし、全員の実印・印鑑(登録)証明書も不要です。当事務所では、不完全な遺産分割協議書(印鑑登録証明書がもらえない)等の事案にも対応しますので、まずはご相談ください。

    遺産分割の付随問題

    遺産分割だけでも、考え、話し合わなければいけないことはたくさんあり、紛争が長期化することがあります。ただ、遺産分割が長引く多くの原因は、遺産分割の「付随問題」と呼ばれる問題だと考えています(先にご説明した「前提問題」とは別問題です)。例えば、使途不明金問題とか葬儀費用の負担(祭祀の問題)です。遺産分割本体ではないのですが、これが絡むことで遺産分割本体が進まなくなってしまうのです。➀裁判所外の話合いでも、②裁判所を利用した話合い(調停)でも、相続人らの関係が円満で、なんでも「合意」できればこれら問題が一気に解決するのですが、我々弁護士ののところに来る事案は、むしろその逆です。相手方の不合理な言い分と戦うため、積極的に➁裁判所を使った(話合い)、➂審判手続きをご提案することも珍しくありません。ご相談時に、話し合いで広く問題解決を目指すことを模索すべき事案か、裁判所の助力を積極的に仰ぎ、遺産分割本体の解決を目指すべき事案か、ご相談者様ごとに最適な進め方をご提案させていただいております。お気軽にご相談下さいませ。

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