石川安藤総合法律事務所

特別受益とは何か?弁護士が解説

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特別受益とは何か?弁護士が解説

特別受益とは何か?弁護士が解説

2025/02/20

特別受益とは何か?弁護士の視点から解説します。民法は、まず「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けたものがあるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、(略)をもってその者の相続分とする」と規定します。すなわち、特別受益とは、被相続人から特定の相続人に対して行った特別な贈与や利益のことを指し、相続時にこれを考慮した公平な遺産分割を実現しようという制度です。先に見た遺産分割の手続きで考慮されるとともに、遺留分侵害額請求事件でも金額算定の基礎財産にも影響します。特別受益の存否・額は、相続の各事件で結果に大きな影響を与えるため、法律の専門家にとって非常に重要なテーマです。

目次

    特別受益とは?弁護士が語るその基本的な考え方

    一般の方にわかりやすいのは、「(生前)贈与」でしょう。たとえば、被相続人が、生前、法定相続人である子供の一人に高額な資産を生前贈与した場合、その贈与は特別受益と見なされます。この特別受益を考慮しないまま相続を進めると、他の相続人との間で公平を失する結果になることがあります。そこで、 特別受益の計算を行うことになるのですが、贈与の時期や金額、形態が関わります。条文上も単に「(生前)贈与」とは規定していません。「婚姻もしくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者がいる場合には」と規定しています。まずは、すべての生前贈与が特別受益ではないことに留意する必要があります。請求する側は条文が規定する特別な生前贈与だと主張・立証し、請求される側は当該特別な生前贈与ではないと守ることになります。なお、「遺贈」は、一般の方には聞きなれない言葉です。正確性は欠きますが「遺言で」財産を特定の者に取得させる場合をイメージしてください(相続人に渡す場合には「相続させる」遺言であり、相続人ではない者に渡す場合は遺贈になります。特別受益はどちらのケースでも問題になります)。遺言で特定の者に財産を取得させる旨の規定があると、当該遺産は遺産分割の対象外になります。しかし残余財産について相続人による遺産分割を行うときに特別受益が問題になり、遺留分侵害の問題の時にも特別受益が問題となるのです。

    特別受益の実例:遺産相続での具体的なケーススタディ

    例えば、父親が長男に自宅を生前贈与した場合、これは特別受益とみなされるのが一般です。この場合、相続分の計算では、その自宅の価値を考慮しなければなりません(相続事件において不動産は「時価評価」です。固定資産税評価額や相続税評価額ではありません)。長男は遺産の先渡しを受けたものと扱われ、現時点における遺産分割事件で取得できる遺産は減額されることになります。不動産の生前贈与については多くの場合「生計の資本としての贈与」に当たると思われます。一方、特別受益には、現金や株式などの金融資産を贈与した場合も含まれます。紛争になりやすいのが、現預金を原資とした生前贈与です。先ほど指摘したように全ての生前贈与が特別受益に当たるわけではありません。例えば極端な例を示すと、お小遣いとして「1万円」もらった相続人がいるとしましょう。法的には「(生前)贈与」ですが「生計の資本としての贈与」ではなく、特別受益には該当しないとされます。これが「10万円」「100万円」だったら?、また「3万円」を毎月50回もらった場合(合計150万円にもなりますね)だったらどうでしょうか?また、「小遣」ではなく、「結婚式費用」だったり、「自宅購入費用」だったりした場合はどうでしょうか。また、時々出てくるのが、相続人の一人が病弱だった場合に生活費の援助をした場合です。そこまで極端な例ではなくとも、扶養義務に基づく金銭移動は特別受益には該当しません。単純な事案であれば特別受益と言いやすいですが、我々弁護士が関与するのは、むしろ単純ではない、これはどうなんだろう?という資金移動です。

    特別受益が及ぼす影響:相続分の計算と配分の重要性

    遺産分割については、遺産分割の対象の特定、不動産などの評価、特別受益・寄与分の考慮を経て、各相続人がいくらの枠を持つのか確定し、その枠内で取得したい遺産を取り合うというイメージです。

    例えば、相続人が兄弟2人の事案で、相続開始時に遺産として3000万円の不動産と、1000万円の預金が残っていたとしましょう。遺産分割の対象は不動産と預金です、不動産は時価評価です(本件では3000万円です)。仮に特別受益、寄与分を考慮しない場合、一人の枠は2000万円ですので、2000万円の遺産を取りに行きます。長男が、3000万円の不動産取得を希望しても、当然には取得できません。とりすぎる1000万円について固有財産から代償金として1000万円を支払う必要があります。いわば取りすぎの1000万円部分について、1000万円で買取るというイメージです。しかし、例えば次男が生前贈与で自宅建築資金2000万円の生前贈与を受けていたとすればどうなるでしょう。遺産分割の対象は不動産と預金ですし、不動産の評価も同じですので、合計4000万円です。しかし、次男が生前贈与を受けた2000万円を持ち戻しますので、6000万円の遺産と考え、一人の枠は「3000万円」です。長男は3000万円の枠に基づき、3000万円の不動産を取得することが可能になります(次男は3000万円の枠ですが、すでに2000万円をもらっていますので、今回は1000万円だけもらえば公平ですねと言わけです)

    相続でのトラブルを防ぐために知っておきたい特別受益の特殊性

    すべての生前贈与が特別受益に該当しないことは先にご説明しました。しかし実際の事案では争点が多岐にわたります。例えば、父が、相続人である長男の子(祖父-孫)とか、長男の妻に生前贈与する場合です。相続人である長男の子は3人、相続人である次男の子は1人のような場合、おじいちゃんが、孫一人に100万円ずつと平等に贈与したと考えている場合(もらった孫の視点では平等ですね)、長男の家は300万円もらったのに、次男の家は100万円しかもらっていないと、家対家で不公平ではないか?とのトラブルになるケースが散見されます。そもそも、相続人ではない「孫」に対する生前贈与は特別受益なのでしょうか?では、長男の子に対する教育資金を、相続人である長男に生前贈与した場合と、長男の子(祖父から見れば孫)に直接贈与した場合、結果は同じなのに前者は特別受益だが、後者は相続人に対する贈与ではないから特別受益に該当しないとなるのでしょうか?色々な家の事情があり、いろいろな事情の贈与がありますので、考えなければならないことが多いのが特別受益です。

    遺言利用の浸透  

    また書きたいと思いますが、遺言の制度があります。インターネットの普及で遺言の作ってみよう(作らせよう)というケースが増え、国も遺言を作りやすい制度を作っていますので、以前より遺言書が作成されるケースが増えてきたと感じます。遺言が作られてしますと遺留分侵害となっているケースが多いのですが、遺留分侵害額請求をする際にも特別受益の存否・額が問題になります。さらにややこしいのは、遺産分割事件で認められる特別受益と、遺留分の事件で認められる特別受益は、若干異なります。特別受益として認められるかどうか判断が難しいケースが多いのですが、特別受益が問題となる事件では相続人間の「不公平感」もあり、深刻な紛争になるケースが多いのが実情です。相談者様のために法律・経験(過去の審判例)を駆使して戦うのが弁護士です。お気軽にご相談くださいませ。

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