使用貸借契約のトラブル解決法
2025/02/13
目次
使用貸借契約とは
動産・不動産を、有償で(賃料を授受して)貸借するのが「賃貸借」契約、無償で(タダで)貸借するのが「使用貸借」契約です。無償での貸借のため、第三者とのビジネス・取引で行うより、親子など特別な人間関係がある場合に行うことが多いと言われます。親子などの特別な人間関係の間で行われる場合、契約書が作成されていないとか、取り決めが曖昧なことが多いことから、人間関係が壊れたり、相続が起こったりして状況が変わったときに、思わぬ、深刻なトラブルに発展する場合があります。親子間で契約する場合が多いことから相続案件でもよく目にする契約になります。そこで、使用貸借契約についてきちんと理解したうえで契約し、対応することが重要です。
契約の成立
例えば、父が、所有する土地に、長男名義の自宅建物を建てさせてやるような場合です。親子間でも、賃料(地代)を支払って賃貸借契約(借地契約)とする場合もありますが、父が、若く資力が乏しい長男のために、無償で土地を利用させてやることの方が多いと思われます。親子間の情誼に基づく何気ない土地の利用関係に思えますが、立派な「使用貸借契約」です。このような場合に、「使用貸借契約書」を作成調印することはほとんどないでしょう。しかし「契約書」がなくとも、口頭で「契約」は成立します。建物は宙に浮いて存在せず、土地の上に存在し土地を占有・利用します。その土地利用権を法的に分析すると使用貸借契約と整理することが多いのです。なお、父が、所有する建物に、無償で長男を住まわせる場合には異なる整理をする場合もあります。親子間で様々な事情もあるでしょうから、専門家にまずは相談してみてほしいです。
契約の終了
民法において、使用貸借契約の終了事由が定められています。➀当事者が使用貸借の期間を定めたときは、その期間が満了することによって終了する。②当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益に目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従って使用及び収益を終えることによって終了する。③使用貸借は、その借主の死亡によって終了する(逆に言うと、貸主が死亡しても終了しません)。そのうえで、裁判例がこれを補完・修正します。例えば、不動産の使用貸借では、借主が死亡したからと言ってすぐには終了しないとされます。貸主が死亡しても、使用貸借は終了しません。むしろ、民法には「契約は守られなければならない」との大原則があり、相続は相続人が被相続人の権利・義務を包括的に承継することですので、相続人は貸し続ける義務を負うのです。しかし、いつまでも無償で貸し続ける義務を負うというのもおかしな話です。どうしたら契約を終了させられるのか?逆にいつまで借り続けることができるのか、専門家に助言を求めてください。
法的手続きの流れ
万が一、話し合いで解決しない場合、法的手続きに踏み切る必要があります。通常、まずは内容証明郵便で相手方に正式な通知を行い、改善を求めることから始まります。その後、相手が応じない場合には、訴訟を起こすことになりますが、ここで重要なのは事前の証拠収集です。契約書、メール、メッセージなど、トラブルの証拠を集めておくことが肝要です。特に契約書には、双方の合意内容が記されているため、裁判において有力な証拠となります。裁判所での手続きにおいては、弁護士のサポートを受けることで、より専門的に進めることが可能となります。弁護士は、適切な戦略を示し、法的権利を守るための効果的な対応をしてくれるでしょう。
相続と使用貸借と関係があるの?
⑴前で出した例(父が無償で長男に土地を貸した事案)が典型例です。他の相続人(次男)にしてみれば、長男だけが無償で土地を借り、地代の負担を免れ経済的恩恵を受けているのは「ズルい」と感じることがあるでしょう。感情的問題にも発展し、遺産分割の処理の支障になることが多いと言えます。
⑵同ケースで、土地を次男が取得することになった場合を考えてみます。貸主となった次男にしてみれば、契約を終了し、長男には建物を取り壊して土地を返還してもらいたいと思うでしょう。そうでなければ次男は全く実利がないからです。しかし、長男は、まだ住宅ローンが残っているのにとか、やっと住宅ローンが終わったばかりなのにと、建物の存続を希望するのは当然です。長男はどうやって契約を継続するか、次男はどうやって終了させるか問題が先鋭化します。これら難しい問題をについて助言、解決のお手伝いをするのが弁護士です。
⑶更に複雑で解決の困難さが伴うのが、不動産の共有の場合です。前ケースで、建物が長男と父親の共有だった場合、相続の対象は土地と建物持分だけです。長男には建物の固有持分があり(長男が居住しているケースが多いと思います)、次男はどうやったら実利を得ることができるでしょうか?逆に長男はどうやって自宅を守ったらいいでしょうか?家庭裁判所の遺産分割調停でどこまで解決できるでしょうか?このような複雑な事案についても弁護士は様々な助言を行うことができます。
当事務所は不動産が絡む相続事件を数多く扱ってきましたし、現在も扱っています。いろいろな助言、提案ができると思いますので、お気軽にご相談ください。